僕のことばの「?」が「!」になるまで|体験談|ヒッポファミリークラブ
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体験談・メンバーの声

僕のことばの「?」が「!」になるまで日常活動

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索寧 / from中国

上海の太古大学堂のキャンプにて(写真)さっくんこと索寧さんは、ヒッポの上海のキャンプがきっかけとなり、昨年は本部でインターン生として活躍してくれました。

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小さい頃は日本で育ちました。保育園や小学校で友だちと遊ぶ時は日本語、家では両親と中国語を話していました。11歳で中国に戻った時の中国語は、聞き取ることはできても、話すことはなかなか通じないという状態。インターナショナルスクールに入ったら、そこでの授業は全て英語で、一歩学校を出れば中国語。日本語はもうほとんど聞こえてこないような環境でした。

その後、大学は日本語科に入学。初めて日本語の文法や発音を勉強しました。勉強した日本語は「うわぁ、ことばって難しい!」と感じるものでした。例えば「おはようございます」は1233243というイントネーションがあると習います。日本にいた頃はそんなこと知らなくても話せていたのに・・・自分の日本語はこどものことばだったのだろうかと思い始めました。ショックを受けて大学では動詞の変形を暗記する勉強などを一所懸命やりました。

ある年、大学から日中交流のキャンプが上海の太古大学堂であると聞いて参加することにしました。勉強してきた日本語を試すよい機会だと思いました。そこで初めてヒッポの人たちに出会ったのです。しかし予想に反して、オリエンテーションがスペイン語で始まったり、中国語はもちろんいろいろなことばがぽんぽん出てくる多言語の場でした。何よりも印象的だったのは初対面の僕に優しく話しかけてくれる人たち。彼らに向かい合った時、とっさに僕の口から出てきた日本語は、小さい頃からの知らない間に溜っていたことばでした。大学で頑張って勉強してきたことからは、ことばは出てこなかった。なんでだろう?と不思議でした。この時の出会いからヒッポでインターンとして働くことになりました。
仕事をしようと張り切って来た日本で、僕がまずすることはヒッポのファミリーに参加することでした。ファミリーでは皆が流暢な中国語で自己紹介するので、当たり前のように中国語で話しかけると「しーん」としてしまったり、自分でもCDを真似して言うけどなかなか意味がわからなかったり。ファミリーの後には皆が僕に「写真撮っていい?」と寄って来て、まるでミッキーマウス状態でした。僕はここに来て一体何をやっているんだろうと悩んだこともありました。

その頃メキシコから同様にインターンとしてファイちゃんが来ていました。彼女はヒッポのCDを真似するだけでびっくりするほど自然な日本語を話していました。僕は英語でも日本語でもなく、彼女のスペイン語で話したいと思いました。でもその時僕が知っていたスペイン語はテキーラだけ。そこから”Me gusta el tequila.” “ Bebo el tequila.”・・・と彼女と話すことで僕のスペイン語は広がっていきました。先にことばの準備をしなくても、そこに人がいればことばは広がっていくんだと感じました。

たくさんのヒッポのメンバーとの出会いの中で気がついたことは、僕は自分の中でことばを壁にしていたのかも知れないということ。人とわかり合うためにはその前にもっとことばを上達させなくては、もっと政治や経済のことも知らなければと思っていました。でも大学の中日交流会等ですごく流暢に高度な話をしている人がいても、その人を近くには感じられなかった。それに引きかえあのヒッポのキャンプでは、ヒッポの大学生たちがたったひとこと中国語のboys talkを言うだけで、中国の大学生が大笑いして場が一つになっていました。何が違うんだろうと不思議だったのでした。

今僕がインターンのこの2カ月半を振り返ると、何をしたかということよりも人の顔が浮かんで来ます。日本で何が美味しい?とよく聞かれるけど、僕はうどんが気に入っています。うどんが恋しくなるのかな。でもうどんだけじゃないかも知れない。ホストファミリーがうどん大好きだから、僕はうどんを通して家族のことを思い出します。ママがうどんを打ちながら娘に小言を言っていたり、その横でパパが黙って碁を打っていたり、その風景がついてくる。ことばも同じで、人をつなぐことばには友だちの顔が浮かぶんです。ヒッポを通してことばに対する「?」が「!」に変わってきました。

飛行機に乗ればすぐに着く中国と日本も、テレビや新聞のニュースでは遠く感じます。でも僕は日本といえば皆の顔が浮かぶし、皆も中国といえば僕のこと思い出してくれるのかな。寂しさよりもまた会える嬉しさの方が大きいです。だから「さよなら」じゃなくて「再見」。

さっくんこと、索寧さん(右から3人目)