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ヒッポの活動を応援してくださっている先生方

ことばと電磁気学の不思議な結びつき

南 繁行

( みなみ しげゆき )

大阪市立大学大学院教授(電磁気学)
言語交流研究所 理事、トラカレ研究協力者

2005年ひっぽしんぶんNo.19

私は、トラカレの活動に十数年来参加しており、主宰する榊原先生の素晴らしいお考えには、いっぱい感動を受けているひとりです。「物事を内側から見ることも大事である」、「外国の人との交流で、互いに共通性を見いだすことが大事」といったお話には、とても共感をおぼえます。  昔、ソ連当時の学会に招待されて行った時、私は、彼の国の人々はとても恐ろしいのだと思っていました。しかし、楽しい時には同じように笑うということを知った時の嬉しさを、今も忘れることができません。そして今では、終生変わらないであろう友情が存在しています。この体験は、私の人付き合いの原点となっています。

さて、私の専門は電磁気学です。宇宙の大部分はプラズマという電気を帯びた粒子でできています。私の研究テーマは宇宙電磁気学といって、オーロラ研究もその中に入ります。最近は電気自動車関連の研究もしていて、この両輪で忙しく走り回っています。私が電気に興味を持ったのは、こどもの頃、家にいろんな電気部品があってそれをさわったり壊したりしていたからだと思います。

こどもの頃は友だちと遊ぶのは大好きでしたが、学校の授業を受けることは嫌いでした。小学校までこどもの足で30分ほどかかりましたので、いやな授業の教科書は持って行かず、取りに帰らせてもらい、うまく、授業に出ないで済むことをやっていました。中学はなおさら行くのがいやでした。今考えると、勉強は人と差を付けるための競争であって、一体何に役立つのかという反発心があったからだと思います。中学卒業時には、「その成績で高校へ行くのか」と言われました。こども心に社会を斜めに見ていたところもあった気がします。幸い、私が入学した高校はとても自由な雰囲気で、私の気性に合っていたのでしょうか、学問も徐々に好きになりました。

というわけで、学校というところはあまり好きではありませんでした。しかし大学3年からの専門科目は楽しくて、砂漠に降る雨のようでした。私は大学に入っても、まさか教員になるとは思っていませんでしたが、いつの間にか大学就職が決まっていました。そこで私は、授業を受ける学生さんたちの目線で教育したいと考えるようになりました。学生さんが学問をする意義を自覚し、好奇心が湧いてこそ、教育の効果もあるというものです。

今、トラカレでは、電磁気学を体系付けたマックスウェルの式の理解に取り組んでいます。電磁気学では、電気が引きつけ合うとか電流が磁気をつくるといった個別の単元の積み上げからでは、電気の本質的な理解は難しいのです。結局、単語や法則の名前だけは覚えたけれど、電磁気学は何もわからなかったなあ、ということになります。最初は難しくて不安になるけれど、全体を包含したこの式を理解しようとしていますと、いつか突然、電磁気学がはっきりと見渡せるようになります。これはことばを獲得する過程と、とても似ていると思います。

電磁気学では「場」という考え方で、現象を理解します。「場」は見えるものではなく、その中に別の電気や磁気を帯びた粒子が入ってきた時に受ける力によって、結果として「場」の存在や強さがわかるのです。ところがその別の粒子もまた自分の「場」を持っているので、それが元々電気や磁気を帯びた粒子がつくっていた「場」を変化させ、その粒子自身にも影響を与えます。この現象を電磁気学では「相互作用」といいます。

これは、人それぞれがつくり出す雰囲気とその作用に、とても似ていると思います。私たちが相手の存在を意識すると、自然とお互いの気持ちは影響を与え合うものです。英語のExchangeの意味はそこにあります。相手の心は、遠くから望遠鏡でのぞいても知ることはできません。お互いの理解に重要な役割を果たしているのが「ことば」です。ヒッポの活動の価値のひとつは、ことばによる心の交流を通して、お互いが新しい発見をし、理解を深め、変わってゆくという「相互作用」の心地よさの体験を楽しむことにあろうかと思います。そして人と人との関係は、お互いの信頼と愛があればうまくいきますし、逆にそれらが存在せずに、単にことばを会話の技術と見なしたのでは、誤解だらけのものになってしまいます。

ヒッポの活動では、愛のある家庭的なきずなが存在していきます。内側に位置して同じ目線で「一緒にがんばろうね」という暖かみ。家族同様の心で交流すればこそ、人と人の間に素晴らしい関係が成り立つのだといえます。このような「場」の存在することが、ヒッポファミリークラブの成功されている理由だと思います。

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