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ヒッポの活動を応援してくださっている先生方

遺伝子の解析ことばの場

塚原 祐輔

( つかはら ゆうすけ )

理研ジェネシス取締役社長
トラカレ研究協力者

2010年ひっぽしんぶんNo.47

僕が研究協力者としてヒッポに関わるようになったのは、ヒッポの研究部門で榊原さんと出会い、『ことばを歌え!こどもたち』(榊原陽著 筑摩書房)を一読したことに端を発しています。この本に書かれていることは、言語というものに対する新しい「概念の発明」なのだと思いました。人間は環境が整えば、大人でも新しいことば(多言語)を習得できる、それは榊原さん自身の経験からの仮説であり、そこを実験し、自分たちの身体で証明しようというチャレンジがヒッポなのだと。これもサイエンスということです。

例えば、パンゲア理論(大陸移動説)のように実験からではなく、概念が先にあり、その後、長い時を経て実証され、今では標準理論になっているものがあります。それは実際、目に見えるものではないのですが、僕は、その目に見えるものの"向こう側"にあるものにいつもワクワクするわけです。

「場」というものも目には見えません。最近は空気が読めないことを「KY」と言いますが、あれは場の空気が読めないということでしょう。では「場」とは何だと思いますか。科学の世界では、ある時「場」の概念が発明されました。それまでは、電気も磁気も別々のものだと考えられていました。+の電荷と-の電荷は引き合い、同じ符号の電荷は反発しあうことを説明することばとして、クーロンの法則が発明されました。それは簡単にいうと、2つの電荷間に働く力は、距離の2乗に反比例するというもの。そこには距離というものだけが存在していることになります。ですが「場」という概念が発明されてからは「電磁場」として統一的に捉えられるようになったのです。+の電荷を置くとそこにはその電荷の場ができます。その場の中に-の電荷を置くと-の電荷も場をつくりながら互いが「場」の力で引っ張られる。そうした力が働くところを場という概念で説明したわけです。

また、より身近な場といえばアインシュタインが発見した「重力場」でしょう。アインシュタインがすごいのは、リンゴが地面に落ちることを、地球がリンゴを引っ張っているだけでなく、リンゴも地球を引っ張っている、そういう重力場があると考えたところです。その力の働きは目にすることはできても「場」そのものは見えない。その見えないものの向こう側にあるものを見つけて感動する。つまりサイエンスとは、目に見えない向こう側の世界を実証し、万人にわかる普遍的なことばで記述することです。そこに大きな感動があるのです。

言語の場というのはあるのかなと考えると、やはり人間が集い、ことばを交わすとそこには場ができる。独りでは場はできませんね。場をつくって、その中でこれからも体験し続け、みつけていくのがヒッポなのでしょう。ことばは有限ですが、その限られたことばで人間が語るものは無限なのです。(トラカレ講座より)

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