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ヒッポの活動を応援してくださっている先生方

HIPPOを「楽しむ」こと

尾関 雅則

(おぜき まさのり)

元鉄道総合技術研究所理事長
言語交流研究所 理事

2003年ひっぽしんぶんNo.11

 私が初めてヒッポに出会ったのは、今から約20年前、当時の国鉄を辞めて日立でパソコン事業を始めた頃のことで、元国鉄総裁の高木文雄さんのご紹介で榊原陽さんとお話したことがきっかけでした。

 その時、ヒッポの自然習得という考え方に興味を持ちましたが、あまり深く関われずに時期が過ぎていきました。その後、長らく忘れていましたが、99年の初めに、勤めていた鉄道総合技術研究所の東京事務所へ突然、榊原さんが訪ねて来られました。お話というのは「この活動を始めてから18年間、いろいろと試行錯誤はありましたが、最近ようやくこの“多言語の自然習得”の活動に確信が持てるようになりました。手伝ってくれませんか」ということで、私も参加することになりました。

 それから3年半余り経ち、世の中の外国語会話に対する要望と関心が大きくなってきたように感じられます。また一方ヒッポの活動を内側から眺めて、いろいろなことがわかってきました。「多言語の自然習得」とは、人間ならば誰でも赤ちゃんのうちに周囲で話されていることばを自然に身につけて、3~4歳になれば話せるようになる。もし3つも4つも違うことばが聞えてくる環境ならば、いくつもことばが話せるようになるということです。ヒッポでは、大人も赤ちゃんの言語習得と同じ道筋で「いつの間にか、知らないうちに」ことばを覚えていこうという訳です。

 ところが、大人がもう一度赤ちゃんに戻ってやることはそう簡単なことではありません。こどもたちやお母さんたちにとっては馴染みやすい方法であっても、特に男性社会人、即ち一人前の会社人間にとって、初めは難しく感じられるようです。この間、私たちはいわゆる社会人にヒッポを伝えようと、会社組織に働きかけてみたり、社会人対象のセミナーなどを開催したりしてきました。その中で続いているもののひとつが「シニア倶楽部」です。しかし、まだ道のりは遠く発展途上であると思っています。

 その一番の理由は、我々大人にとってことばを覚える時に、どうしても「勉強」という姿勢が抜けないということです。例えば、早く言えるようになろうと、昔単語を覚えた時のようにCDを暗唱しても多少の効果はあるでしょうが、やはり家庭や日常の中で多言語に触れることのできる環境を創ることが大切なことだと思います。家族で一緒にヒッポを楽しんでいる人に、長く続けて自然に多言語を身に付けている方が多いのは、決して偶然ではないのでしょう。

 ことばの習得には、人と人との出会いが重要です。ことばは人と人を繋ぐものですから、CDから出る機械の音だけ何百回聞いても、それだけでは身に付かないようです。人と人との間で意味を運び、伝えてこそ言語であるわけで、CDは補助手段のひとつでしかないこともわかってきました。やはり、自然にことばを習得していくにはヒッポを「楽しむ」ことこそが最も重要であるということではないでしょうか。

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