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ヒッポのある生活コラム

2026年春 オープントラカレ開催レポート


オープントラカレ講座は、物理学からアートまで、さまざまな分野で研究・活動するLEX / ヒッポファミリークラブの研究協力者を講師に迎え、「ことばと人間」について一緒に考える講座です。社会言語学、脳科学、生物学、物理学、情報学、音楽など、専門分野の垣根を越えて、多様な視点から「ことば」と「人間」を見つめます。

2026年春(4月~5月)には、誰でも参加できるオンライン講座を全8コマ開催。
専門家の話を聞くだけでなく、参加者も問いを持ちながら、「ことばと人間を自然科学する」ことを考える機会となりました。
トラカレとは:「トラカレ」とは、一般財団法人言語交流研究所ヒッポファミリークラブが運営する研究部門「トランスナショナル・カレッジ・オブ・レックス(Transnational College of LEX)」の略称です。1984年に創立されました。トラカレでは「ことばと人間を自然科学する」という理念のもと、多言語の活動体験をベースに、音声や数学、物理学などの自然科学など、専門分野の枠を超えたさまざまなフィールドワークに取り組んでいます。

4/26 中村桂子さん(生命誌)

「私たち生きものの中の私として生きるー生命誌からの提案」

中村桂子さんの講座では、「私たち生き物の中のわたし」をテーマに、40億年にわたる生命のつながりや、DNAから見えるさまざまな生きものの共通性についてお話しいただきました。

蝶の味覚や目のレンズ、顎の進化など、生きものの具体的な例を通して、生命の多様性や進化について考えました。また、人間がことばや共感、想像力・創造力を持つようになった背景や、人間も自然の一部として生きていることについてもお話しいただきました。

講座参加者の感想から

  • 今日特に心に残ったのは、人間だけが持っている「共感する力、想像力、創造力」そこからことばが生まれた、ということです。

  • 最近、ことばを使うことの難しさを感じています。でも、先生のお話をうかがって、40億年の生き物の長ーい歩みの中で生まれてきたことばなのだから、使いこなすなんて、おこがましいって思いました。そう思うと、少し楽になりました。失敗してもいいから、やっぱり話したいなって思いました。

  • こうして感じることができるのも、それをこうして誰かに伝えられるのも、ことばあってのこと。DNAは?とか生き物は?人間とは?とか考えて人と語るのは難しいけれど、日常感じたことを周りの人たちと話すことは楽しくできるので、そんなことを続けていけたらと思います。

  • ヒッポに入ってから、それまで超苦手で学生以来無縁だった自然科学の世界を知るようになってわかったことが色々ありました。文系人間の経験から大切と思っていたことが、理数系の世界からも同じようなところにいきつくのだということがわかってきました。

  • ヒッポの多言語とDNA、一見関係ないように思っていましたが、それが今回、先生のお話と繋がりました。40億年前の一つの細胞から全ての生き物が植物も含めてつながっていること、全生物が持つ共通のコドンの暗号によって、DNAが生き物の様々な組織になっていく仕組みも基本は同じこと。だから生き物は同じ仲間であること、そして人間も自然の一部で、ことばも自然からなるんだということにもつながりました。

  • 小さな虫や植物、ほかの野菜もすべてにDNAがあるっていうことだということは、僕たちと同じということだね!(小3)

  • おおぎ型の絵を見て、40おく年前から生命があったということにおどろきました。DNAの話をきいて、生きものと機械の違いはDNAも関係あるのかなと思いました。(小5)

プロフィール

中村桂子 さん
(生命誌/JT生命誌研究館名誉館長)
中村桂子さんは、38億年の生命の歴史を一つのつながりとして捉えなおす「生命誌」という新しい総合知を創出し、「生きもの」の研究に取り組まれています。毎年のオープントラカレ講座でお話をしてくださっており、いつも私たちをやさしい気持ちにさせてくれます。30年以上にわたって研究協力者として応援してくださっています。

主な著書:『老いを愛づるー生命誌からのメッセージ』(中公新書ラクレ)『中村桂子コレクション・いのち愛づる生命誌』(全8巻)(藤原書店)

4/26 竹内昌治さん(バイオハイブリッドシステム)

生体と機械が融合したロボットは、未来をどう変えるのか

竹内昌治さんの講座では、生体と機械を組み合わせる「バイオハイブリッドロボット」をテーマに、生きものの筋肉や皮膚などが持つ優れた仕組みをロボットに取り入れる研究についてお話しいただきました。

「筋肉で動くロボット」や「皮膚の再生」、「培養肉」、「微生物とマイクロマシン」など、さまざまな研究を通して、医療や環境、食料などへの応用の可能性があることを教えていただきました。

さらに、生きもののように動く機械が社会に現れたとき、私たちはどう感じ、どう向き合うのかという先生からの問いは、参加者と一緒に生命や人間について改めて考えるきっかけとなりました。

講座参加者の感想から

  • 先生が「人間って何だろう?を考えている」ということばには驚きもありました。社会に貢献する気持ち、それはまさに人間って何だろうなのかもしれません。

  • ロボット好きの子供たちが目を輝かせているのが印象的でした!ロボットを探求すればするほど、生物の素晴らしさを実感して”人間とは?”という問いになっていくというのが、象徴的で、小さく問えば小さく、大きくとえば大きくという大自然への偉大さを感じました。時間と能力をかけて研究してもわからない「人間・生物・命」はすごいものなのだと思いました。

  • ロボットと真逆にいるような生物、人間の素晴らしさを改めて感じながら、良いところを融合できたら、今人間が抱えている様々な問題を解決できるかもしれないし、広がるかもしれない。どんなものがあったらいいのだろうと私も考えたくなりました。

  • 指を動かすと(曲げる)腕の曲がる場所の近くにある筋肉が動くのをみて手を置いて曲げてみたら動いているのが(筋肉)わかった

  • ロボットが、テニスのラケットを張っているのが面白かった。筋肉は動けば動くほど、筋肉が大きくなることも知りました。だから、自分もたくさん運動をすればするほど、筋肉が大きくなるのかな?って思いました。

  • 最初はまだまだ培養肉は、食べれないと思っていたけど、先生の本をどんどん読んでいったら食べれるようになるのもそう遠くないと思ってワクワクしました。講演会を聞いて先生が研究室にたくさん世界一があってビックリしました。

プロフィール

竹内昌治 さん
(バイオハイブリッドシステム / 東京大学大学院情報理工学系研究科教授)

竹内昌治さんは、工学の技術を活かした細胞や細胞膜の人工構築、培養肉の構築など、新しい研究、産業の創出に取り組まれています。特に再生医療の分野で期待される若手研究者としてメディアにも頻繁に取り上げられています。機械、電気、情報、生物、化学、材料など様々な分野をバックグラウンドとする研究者が集まったユニークな研究室を主宰されており、そのテーマは「Think Hybrid!」。いろいろな分野をゴチャ混ぜにして、新しいものを創ることに挑戦しています。

4/29 岩田誠さん(神経内科学)

脳の中の文字

岩田誠先生の講座では、「脳の中の文字」をテーマに、文字を読んだり書いたりするときに脳のどの部分が働くのか、失語症や失読・失書の症例などを通してお話しいただきました。

漢字とひらがな・カタカナでは、文字を読むときに働く脳の場所が違うことや、文字の読み書きができなくなる「失語症」などの例を通して、私たちが普段何気なく使っている文字の仕組みのお話は、とても興味深いものでした。

文字の発明の歴史や、使わない神経回路が整理されていく脳の仕組みなどから、ことば・文字・文化と人間の脳の不思議について考える講座となりました。

講座参加者の感想から

  • 脳と文字について、大変興味深いお話でした。自然によって作られた私たち人間の脳は、ものすごい創造物だと改めて思いました。

  • 文字とことばを結びつけて使うには、さまざまな働きが必要で、脳の違う場所が働き、回路も1つではない、ということも面白いし、文字の使い分けがある日本だからこそそれを見つけられたというのもとても面白かったです。

  • アルファベットを使用する言語圏では音節が多いので、語学での発音習得が有利そうと羨ましく思っていました。しかし、中国から伝わった漢字と、必要にせまられて生まれたカナ文字を使う日本語文化が改めて面白いと思いました。

  • 言語習得の際、まず初めに文字を見ずに、音だけに浸る世界から入るヒッポは、古来人間が進んできた道そのものなのだなと思いました。ここから、私たちは各々の体験をどういう意味を持つのか?その時脳はどう働いているのかと時々言語化する、考えることが必要と考えます。

  • どの文化にも対応できるよう、脳の神経細胞数は赤ちゃんが一番多いことや、その後の生理的細胞死のお話は、人間はどのことばも発音できるように産まれてくるにも共通していると思いました。人体は複雑だけれど、シンプルなのだと感じました。

  • 「脳は使わないと失われる」このことばにもハッとさせられました。文字は書かないと忘れてしまう。パソコンやスマホで入力することが多い現代、鉛筆を持って書くことを意識してやって行かなくてはと感じました。ヒッポの人は回路を多く使っていると先生が話てくださり、人と接する・様々な文化の人と交流する、多世代の中で活動する、体力気力を使うことだけれど、脳への刺激は最高なのかと思い、ますますヒッポの活動を楽しんでいきたいと思いました。

  • 看板を見せていただいたとき左から右に読むのではなく、右から左に読むと言っていたとこが面白かったです。一部だけ読むと変なことばになっていてどういう意味か分からなくなって最初から読むと意味が分かるということが面白かったです。(小学生)

プロフィール

岩田誠 さん
(神経内科学/東京女子医科大学名誉教授、(一財)言語交流研究所理事)

岩田誠さんは、10年ほど前からヒッポファミリークラブの活動に関わってくださるようになり、現在は(一財)言語交流研究所理事として応援してくださっています。脳に障害を負った患者のリハビリなどを行う神経内科医であり脳科学の第一人者。歴史、絵画、音楽などにも造詣が深く、ヒッポファミリークラブのべべ(赤ちゃん)フィールドにも多大な関心を寄せてくださっています。

主な著書:『医(メディシン)って何だろう?』(中外医学社)『ホモ ピクトル ムジカーリス―アートの進化史』(中山書店)

4/29 坂田明さん(ジャズサックス奏者・ミジンコ研究家)

音楽とミジンコで暮らしてきたら何が見えたか

坂田明さんの講座では、ミジンコの生態や小さな命のふしぎについて、実際の映像やお話を交えながら紹介していただきました。
坂田さんが顕微鏡を持って会場に来られ、みんなで動いているミジンコを観察。
透明な体の中で心臓や卵が動く様子や、環境の変化に合わせて命をつないでいくしくみに、参加者から驚きの声が上がりました。

さらに、音楽についてのお話では、「ことば」と「音楽」のちがいや、音に込められる思いについても考えました。
そして最後には、参加者の一人の男の子と坂田さんが、サックスとトロンボーンで即興セッション!会場が一体となるような、熱気と感動にあふれた講座となりました。

講座参加者の感想から

  • 小さなミジンコも生物の循環に不可欠な存在だと認識したら、とても大きく感じました。ミジンコの透けて見える臓器や赤ちゃん、環境危機の命をつなぐ手段など聴いているとワクワクして、私やっぱり生き物好きなんだなと改めて気付きました。音楽は娯楽であり、人が住んでいるところの風景という内容がhippoをやり始めてしっくりきたことです。

  • 生きるために生きる!シンプルで力が湧いてくることばです!自分が音楽と向き合って作って来た、自分の音というのも感慨深いです。自分の音を人生に響かせて生きたいです。

  • 坂田先生のサックスの音色を聴いていたら「楽譜はことばで、弾いてあげるとねてる楽譜が立ち上がる」って言っていた坂田さんのことばが腑に落ちた気がしました。

  • 「音は風景、命あるものが命の音を出す」「僕が持っている音が出る」など感動的なことばをいただいてギャフンとなりました。死ぬまで生きていけばいい。そうですね。もうすぐ米寿を迎える私です。もっと気楽に楽しんで生きていきます。子供たちの質問がかわいい!ミジンコもかわいいですね。セッションしていただいた若者はどんなにうれしかったでしょう。Muchisimas gracias!!!

  • 今回リアルで参加させていただきました。坂田さんが、リアルでミジンコをみんなに見せたいということで、色々苦労しながら、みんなで一緒にドキドキしながら、動いてるミジンコが見えた時には、本当に感動しました。

  • ミジンコはミジンコをしている!生きるために生きる、生きる目的は?とかそんなに思い悩まなくてもよい、という話が印象的でした。思い悩むところもまた人間らしいところだし、必要なことでもあるかもしれないけど、なんでも大丈夫!というのが、心強く、また気持ちが軽くなりました。

  • 坂田さんの音楽や言語、ミジンコを含めた自然科学の世界観がとても素敵だと感じました。(大学生)

プロフィール

坂田明 さん 
ジャズサックス奏者、ミジンコ研究家/東京薬科大学生命科学部客員教授、広島大学大学院生物圏科学研究科客員教授、(一財)言語交流研究所理事

坂田明さんは、35年ほど前の、多言語活動提唱者榊原陽とのラジオでの対談をきっかけに、ヒッポファミリークラブのメンバーになりました。研究協力者として、また、(一財)言語交流研究所理事として、長年ヒッポファミリークラブの活動を応援してくださっています。オープントラカレ講座ではいつも人間味あふれる楽しいお話に加え、サックス演奏、ミジンコ観察など盛りだくさんです。

主な著書:『私説ミジンコ大全 CD「海」付』(晶文社)
公式サイト:http://www.akira-sakata.com/

5/6 酒井邦嘉さん(言語脳科学)

小説を書くには

酒井邦嘉さんの講座では、先生自身が好きな小説や作家のお話をきっかけに、人間が小説を書くということについて考えました。
小説を書くには時間がかかり、自分の中から自然に出てくることばを探しながら、何度も書き直して作品をつくっていく。その創作の過程には、AIには代えられない人間ならではの思考や表現があることをお話しいただきました。

さらに、AIによって小説や文章を簡単につくれるようになった今、人間が自分で考え、ことばを選び、時間をかけて文章を書くことにはどんな意味があるのかについても考える講座となりました。

講座参加者の感想から

  • 「優れた作品は努力なしには生まれない」ということばが心に残りました。AIの心地よいことばは決して体に良くありませんね。AIが商売であることもよくわかりました。楽な方へ楽な方へ流れていくのを辞めたいです。ヒッポは人に伝わることばを考え続けています。一人でも考えるし、みんなでも考えます。改めて素敵な場に自分がいることが嬉しくなります。

  • AIでも何でも、便利な物(楽する)を手に入れた分、失う物があると日々感じています。昔は自然の中でタダで遊んでいたのに、今は自然の中で遊ぶにも(アスレチックなど)お金を出さないと遊べない。スマホのない時代の約束の仕方、お金じゃなくて電子マネー、ガスじゃなくてIH、保育園の子どもたちのままごとが 火加減を見るではなく、チン!電車の中でスマホを見て大人しくしている小さな子。本物か、本物ではないか、、それすら気にならなくなってしまうのではないか。AI時代に生きる子どもたちに必要な事、自分で考える力、創造力、本物の体験。ヒッポやっててよかったと改めて思います!

  • 酒井先生が徹底的にAIを排除した生活を送っていらっしゃると聞いて、素晴らしいなと思いました。私は検索するとAIの回答が一番最初に来て、もっともらしいのでそれを使ってしまうことが多々あるので反省しきりです。また教育の現場でもAIに頼っているということや小説もAIが書いたものが受賞しているというお話を聞いて、ショックでした。今はまったく使ってない国語辞典を出して使うことから始めようと思いました。これからも子どもたちが主体でいきいきとできるヒッポの場をみんなで大事にしていきたいと思いました。

  • 私が特に印象に残ったのは、AIによって人間は書くことと読むことを殺してしまうというお話で、私の学校でも実際課題をAIを使って提出している人がいます。正直な話、私も時短のために使ったことがあります。でも、やっぱり罪悪感というかモヤモヤを感じてしまい、使うことをやめようと気づくことができました。さらに、AIと会話するよりたくさんの色んな意見を持った、感情を持った人間と会話するほうが何百倍、何千倍も楽しいと思いました。

  • クニの研究の根源は『人間とは何か?』に向かっていることがわかり、改めて考え直さなければいけないと思いました。科学の発展と共に、使われ方によっては危ない方向に向かうことが多々あり、人間の良心がブレーキをかける必要があります。人間の良心=大義名分ではありません。その意味で酒井先生の発信に同意できました。

プロフィール

酒井邦嘉 さん 
(言語脳科学/東京大学大学院総合文化研究科教授

酒井邦嘉さんは、毎年のオープントラカレ講座でお話をしてくださっており、ヒッポファミリークラブ及びマサチューセッツ工科大学のスザンヌ・フリン教授と共に進めている共同研究「多言語習得の脳科学的効用」において、中心的な役割を果たしてくださっています。2021年と2024年には、この共同研究の成果である研究論文が、Nature誌の姉妹誌『Scientific Reports』に掲載されました。

主な著書:『人間とは何だろうか-脳が生み出す心と言葉』(河出新書)『デジタル脳クライシス-AI時代をどう生きるか』(朝日新書)『勉強しないで身につく英語 脳科学による画期的メソッド』(PHP研究所)『脳とAI-言語と思考へのアプローチ』(中公選書)『チョムスキーと言語脳科学』(集英社インターナショナル)『言語の脳科学-脳はどのようにことばを生みだすか』(中央公論新社)

5/6 坂東昌子さん(理論物理学)

生き物はほんとに原子からできている?

坂東昌子さんの講座では、ビッグバンから原子、生命の誕生、DNAや細胞の働きまで、宇宙と生命のつながりについて幅広くお話しいただきました。
リンやATP、がん抑制たんぱく質P53、ミジンコなど、さまざまな例を通して、生きものが環境に合わせて変化し、多様性を生みながら命をつないできたことを考えました。

福島の原発事故をきっかけに、市民と一緒に科学を学び、考えてきた経験にも触れ、「なんでやろな?」と疑問を持ち、AIのようにすぐ答えを出すのではなく、「時間をかけて自分で考えること」、「みんなで話しながら新しいことを知っていくこと」の大切さもお話いただき、ヒッポとの重なりも感じる講座となりました。

講座参加者の感想から

  • ビッグバンから素粒子の形成への話から、生命誕生にリンが欠かせない話になり、物質と生命の堺がとても低くなりました。初期の細胞から遺伝子を組みかえて強くなることを細胞は知っているみたいで、生命の不思議をますます感じました。

  • 「いろんな人に聞いてみ。誰か知ってる人いるかもしれん。」「みんなが同じ人間(生き物)ばっかりやったらアカン!」「一回頭に入れて自分で考えることが大事。」等々、どれも忘れたくない力強いことばです。宇宙の誕生のお話の中で、「原子・分子(時間をためる器)」と書かれていたのが強く印象に残っています。 AIは(答えを出すのが)速すぎる”とも言われていました。速くないこと=いったん脳に入れる時間のズレが、進化(この先へ生きていく道)に繋がるのかなと、今はそんなことがぐるぐる巡っています。

  • ばんちゃんが、なんでやろ〜?面白いな〜〜✨をお話しの中で繰り返しおっしゃる姿が本当にキュートでした!宇宙の高圧高密度から柔らかくなったところに生物が生まれた。。AIは早すぎるねん!時間に対して暖かさと柔らかさを感じられたのは初めてです。

  • ばんちゃんがいろんなことに興味を持って、なんでやろ?とワクワクしている感じが伝わり、楽しかったです。ビッグバンから始まり、原子や生命、ゾウリムシ、大腸菌、ミジンコ、人間のこと、大変興味深く聞かせていただきました。そして命を繋ぐためにはDNAを正確に受け継ぐこともだけど、環境に合わせて変化したり、ちょっと違う、多様性がとても大事というのと、いろんな人と一緒にやる、話し合うのが大事というのが本当にヒッポと同じでそれが自然~本当にそうですね!

  • 「なんでやろな」の好奇心から始まった物理の研究が「生き物」の不思議に迫っていくのはとてもわかる気がしました。まだまだ分からないことだらけの「生き物」の先に、さらに謎だらけの「脳」「知能」に興味は移っていくのでしょうか。ヒッポでやっている、自然の存在である「人間のことば」の不思議をみんなと見つけたい!というのと重なる気がしてとても嬉しくなりました

  • 宇宙の始まりから、生命の誕生、そして今私たちがAIの急激な進化により直面している「生きてるって?考えるってなに?」という問いまで、お話を聞きながら、またたくさんの問いが自分の中に生まれました。自分がこの世に生を受けたのは、宇宙の始まりから続いてる揺らぎと偶然の重なりから起こっているんだと考えると、果てしない気持ちになります。人間に与えられた「ことば」、AIが発することばとは全然違う。私たちの「ことば」は人と繋がって、一緒に新しい知を見つけていくためにあるもの。この先も命が続いていくために、何ができるだろう?この大きな時代の変わり目に、オープントラカレの先生方の話を聞きながら、考えている日々です。

プロフィール

坂東昌子 さん 
(理論物理学/愛知大学名誉教授、京都大学基礎物理研究所研究協力員、(一財)言語交流研究所理事)

坂東昌子さんは、京都大学湯川秀樹研究室のご出身で、女性としては二人目となる日本物理学会会長などを歴任されました。10年ほど前にヒッポファミリークラブの研究協力者になり、現在は(一財)言語交流研究所理事として関わってくださっています。ヒッポファミリークラブのアマチュア精神を高く評価してくださっており、ご自身も一般市民と科学者をつなぐNPO法人「知的人材ネットワークあいんしゅたいん」を主宰されています。

主な著書:『放射線 必須データ32:被ばく影響の根拠』(創元社)

5/9 鈴木淳さん(理論物理学・情報学基礎論)

量子力学における諸問題

鈴木淳さんの講座では、量子の「粒でもあり波でもある」といった不思議な性質や、観測することで振る舞いが変わることなど、量子力学の基本についてお話しいただきました。

量子を人にたとえたり、身近な例を使ったりしながら、「わからないからこそ面白い!」量子の世界を分かりやすく紹介していただきました。

参加者からのどんな質問にも真摯に向き合い、丁寧に答える姿からは、ヒッポの中で育ってきた鈴木さんらしさも感じられました。
これからの科学を担う人たちが鈴木さんのように「人間とは何か」を考えながら科学と向き合い、未来をつくっていくことへの期待も感じられる講座となりました。

講座参加者の感想から

  • 本当に難しい量子の世界のことを、淳さん一流のわかりやすい例え、板書(黒板風のパワポだったのでこんな表現にさせていただきました)などを用いながらお話していただき、まだまだ分からないながらも更に量子の不思議な世界の魅力に引き寄せられました。こんなに不思議に満ちた、まるで生き物のような動き⁈働き⁈をする量子を使って広がる未来の世界への夢を感じると同時に、国の思惑が働くととても恐ろしいものにもなるかもしれないという、まるで量子のように相いれない感情が重ね合わせで起きてしまうことも、私が『人間』だからかなと思ったりもしました。今回『量子』という切り口でお話してくださいましたが、この講座を通して改めて『ことばと人間』についても考えさせていただきました。

  • 「物理学の目的は自然現象を人間のことばで説明すること」、「わからないから面白い」という先生のことばが印象的でした。これからもヒッポの仲間と「ことばを自然科学する」こと、「ことばで自然科学する」ことを楽しんでいきたいと改めて思いました。

  • 量子力学には文脈的依存性がある、というのがなるほど!と思いました。ことばの振る舞いと重ねてみれば、量子は人間的とも言える気がしました。人間は多面的で見る人によって違うし、相手によって引き出される人格も変わる。

  • (ヒッポ創設者の)榊原さんが何十年も前に『部分と全体』から量子力学の世界に魅了され、人間のことばについて新しいステージに立たれたことが理解できました。このことが今回の一番の収穫でした。また、研究員は結果を出すことのみが求められていない、面白いと思うことを追求していくのだ。との姿勢が熱く語られて、眩しく見えました。自分にも刺さりました。

  • 私たち人が見られていると、自然なそぶりができなくなったりするように、量子も観測されることで動きが変わってしまうというのが不思議だなと思いました。また、量子の世界は、理解しきるということはできないという前提があるので、量子のお話を楽しむことに集中できたと思います。講座を聞いて、子どもたちがお母さんがいるときと、いないときで、振る舞いが違ったりすることを思い出して、量子に似ているなと思ったりしました。量子にも、人にも、自分の見えないところでまた違う顔があるんだなとなんとなく思いました!

  • とてもわかりやすくて、量子力学を身近に感じることができました。(小6)

プロフィール

鈴木淳 さん
(理論物理学、情報学基礎論/電気通信大学大学院情報理工学研究科准教授

鈴木淳さんは、埼玉のフェロウ・鈴木ムティのご子息で、ヒッポファミリークラブの多言語環境で育った研究者です。高校生の時に聞いた、ヒッポファミリークラブの研究協力者のお一人である山崎和夫先生の講義で量子力学に興味を持ち、現在は量子力学を応用した量子情報理論の研究などに取り組まれています。

5/9 木村護郎クリストフさん(社会言語学)

言語能力再考

木村護郎クリストフさんの講座では、言語能力を考える新しい視点として「仲介力」についてお話しいただきました。

相手の状況や気持ちを想像し、必要なことをくみ取りながら、それをことばにして伝えていく「仲介力」。
英語だけに頼らず、さまざまなことばや方法を使って人と人をつなぐことの大切さや、「節英」「節AI」といった考え方についても考えました。

映画や海外の人との交流、先生ご自身の子育てなど、身近なエピソードを交えたお話は分かりやすく、参加者からの質問にも一つひとつ丁寧に答える、温かく気さくな講座となりました。参加者自身も、これまでのヒッポでの活動や日常の人との関わりを振り返りながら、「自分にも仲介力があるのかもしれない」と気づいたり、人と人との間でことばを育てていくことの大切さを改めて感じたりする時間となりました。

講座参加者の感想から

  • 節英は節AI になり。仲介ということばを聞きました。ヒッポをしている意味とは自分と他者とをことばを通して仲介していく事なのかと感じました。

  • ヒッポで多言語に出会い様々な活動をする中で、わからないなかにいることに慣れ、相手が何を伝えているのか想像する力や、勇気を持って相手に声をかけていく力がついてきたように思います。大人になって必要なのは、当たり前と考えてしまう価値観や行動様式を問い直すこと、という最初のお話に励まされました。思うように伝えられず、自分の口から発する多言語に自信をなくしてしまう場面に遭遇することもままありますが、そのさまざまな困難さを越えて相手と通じ合えた、分かり合えた、楽しい時間を持てた瞬間の喜びがなんとも言えず嬉しくて、何度でも日本と違う文化や言語を持つ人たちに会いに行きたくなります。先生のお話を聞いて、自分がどうしてこの多言語の活動が長く続けていけているのかがわかりました。「仲介」とは相手を察した上で、それをどう表現して伝えるかということ、という最後のお話も、胸に刻んで日々楽しく多言語や人に出会っていきたいです。

  • 一般に言語能力を測る4技能に今回は「仲介力」が加わりました。相手が望んでいるものを察して言語化したり、周りの人にも気を配って話しかけていくとか、あたかも日常のファミリーで行っていることだと感じました。こういうことがメンバー間で行われているファミリーで育った子供たちは、自然にそういう「仲介力」を身に着けていくと思います。対AIではなく、人と一緒にことばを育てあうヒッポの環境が、これから重要視される「仲介力」を育てる場になると確信しました。

  • 仲介能力は、状況や意図を理解して察して、その状況が円滑になるよう言語化することと伺って、それは本当に人との関係性の間でしかできないことで、人間が人間らしくいられることができる社会を創っていけるか、危うくなっていくこれからに、本当に大切なことだと思いました。これからの子どもたちも過ごすヒッポの場で、参考にさせていただき、なにか実践していきたいと思いました。

  • 以前から木村先生が提唱されている節英という考え方もすごく納得できるものでしたが、今回初めて聞いた「仲介力」ということばが非常に興味深く印象に残りました。今までヒッポでは多言語人間が育つとともにコミュニケーション能力も身に付くと感じていましたが、今回の仲介力という新たな能力の話を聞いて、これもヒッポの中には確実に育つものの一つだなと感じました。これは前記のコミュニケーション能力ともまた微妙に違う、人と人との間を繋ぐ能力として、これからどんどん注目されていく能力になりそうですね。

  • 節AI.仲介力が印象に残りました。原子力と英語を同じに例えた表現もわかりやすくなるほどでした。一つのやり方に頼ることなく色々取り入れることが良いということ、納得です。仲介能力という言語の考え方、読み書きだけでないコミュニケーション、とても大事だど思いますので、それが必要とされることは良いことだと思います。

プロフィール

木村護郎クリストフ さん 
(社会言語学/上智大学外国語学部ドイツ語学科教授

木村護郎クリストフさんは、ドイツ人のお母さん、日本人のお父さんのご家庭で育ち、ドイツ語、英語、日本語のほか、少数民族のことばも話される多言語人間です。「世界は多言語、上智も多言語」のキャッチフレーズで上智大学、慶応義塾大学で「多言語コミュニケーション」の授業などをされており、2019年には慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)、上智大学にてヒッポファミリークラブとのコラボの授業が実現しました。節度を持って英語を使う「節英」を提唱し、脱英語依存の教育に取り組んでいます。

主な著書:『節英のすすめ:脱英語依存こそ国際化・グローバル化対応のカギ!』(萬書房)『異言語間コミュニケーションの方法-媒介言語をめぐる議論と実際』(大修館書店)

8講座を通して

今回のオープントラカレ講座は、先生方のお話を聞くだけでなく、ヒッポのメンバーみんなでつくり上げた8つの講座でもありました。

各講座の司会や進行を担うチームを全国から募ると、たくさんのメンバーが参加。
大人だけでなく、子どもたちも一緒になって、講師の著書を読んだり、過去の講座の録画を見たり、時には講師の先生方を迎えての準備会をしながら、それぞれの研究に触れていきました。

子どもも大人も、専門家ではないからこその素朴な疑問を持ち寄り、ワイワイがやがやと話しながら、少しずつ講座を形にしていく時間も、オープントラカレの大切な一部です。

日々の環境や体験の中で、多言語を楽しく身につけているヒッポのメンバーと、さまざまな分野の専門家である先生方が、立場を越えて一緒に考え、語り合えること。
そこに、オープントラカレならではのおもしろさがあります。

8つの講座から広がったのは、たくさんの発見と「もっと知りたい」という気持ち。
みんなで考え、楽しみながら「ことばと人間」を見つめる、そんな8つの講座となりました。
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